心理学の本に興味を持つ前から、アーサー王の物語をなぜかとても面白いと感じていました。
アーサー王は、ローマとケルトの血を受け継ぐ実在した人物で、6世紀にブリトンに侵攻したサクソン人を撃退した英雄らしい。
アーサー王の物語は、円卓の騎士たちと伝説の聖杯を探す冒険など、いくつかの物語で構成されています。
ケルト人は、紀元前よりヨーロッパに定住していた人々で、自然崇拝の多神教を信仰していました。
その後、キリスト教が入ってきたり、ゲルマン人が移動してきたりして、ケルトの文化は衰退して行くのですが、アーサー王の物語には、その文化の影響が色濃く残っているんです。
田中仁彦著「ケルト神話と中世騎士物語」(中公新書)には、そのことが詳しく書かれています。
その本の中で、アーサー王の騎士たちはさまざまな冒険を繰り広げるのですが、冒険の途中からいつの間にかケルトの他界に入り込んでいる。
その世界の中で、貴婦人の愛を失ったり、騎士と決闘したり、貴婦人の愛を再び取り戻したりする。
それは、苦難を経て自分の価値を高めて行く過程であり、男性の中にある抑圧された女性像(アニマ)を解放し、より高い次元での男性像(アニムス)との結合の物語(←意訳)であったりするようなのです。
本の最後には、ユングの集合的無意識に話が及んでいます。
これを読んだあとに、河合隼雄さんにも「ケルトを巡る旅」(講談社+α文庫)という本があることを知ったので、早速購入しました。