アランの幸福論はお坊さんのお話を聞いているようだと書きました。
今日、集英社文庫の解説を読んでみて、改めてその想いを強くしました。
私は嫌なことや悩みがあれば、まず最初に本やインターネットの記事に、その解決方法を求めます。
世の中にはまだ自分の知らない考え方があって、それさえ知れば嫌なことや悩みは一瞬で消えてしまうんじゃないか、という期待があるんですね。
当然、そのような考え方にはほとんど出会うことはありません。
アランの幸福論には、そのような期待を抱かせる箇所はあまりありません。
あなたの抱えている不安や絶望といったものは、実は胃の痛みや寝不足から来るものかもしれないよ、というように、あくまで現実の生活に即した考え方や生き方を示してくれます。
昨日は、禅的な生活と似ているところがあるようだとお話しました。
禅のお坊さんの生活といえば、朝早くから規律正しく掃除や坐禅、食事などをされているように見えます。
そのような修行を通して、心や身体が健全さを取り戻して行く。
仏教の深層心理学といわれる唯識も、その教理をまとめたのは瑜伽行唯識学派という、瑜伽行=ヨガを実践していた学派であって、頭の中だけでできあがった理論ではないのですね。
アランの幸福論は、ただ椅子に座って観念的に幸福を求めるのではなく、心の外の世界や行動に目を向けさせてくれる、貴重な本だと感じています。