森さんの本から17世紀のヨーロッパやライプニッツへの接し方が分かりました

昔から森毅さんのエッセイが大好きで、体を壊して療養中に読んでいたときは、森さんの柔軟な世の中の見方に対して、自分はそれまでずいぶん硬直した考え方をしていたなと反省したものです。

そんな森さんの本、「魔術から数学へ」(講談社学術文庫)にざっと目を通してみて、自分なりに17世紀のヨーロッパやライプニッツへの接し方が分かりました。

森さんは本の中で、ライプニッツの哲学は奥深くてカントに乗りこえられてしまうようなものではないと思うが、ここでそれを論ずるほど学識ゆたかではない、とおっしゃっています。

続けて哲学者にリクエストして、「どなたかライプニッツの解説をして、僕にも少しはわかるようにしてほしい」とも。

もちろん、森さんが「わからない」というレベルは私とは次元が違うのは理解していますし、森さんが分からないなら私がライプニッツを分かるわけがないということも納得できました。

これからは、逆に気楽にライプニッツの哲学に接することができそうです。

驚いたのは森さんが一番憧れているのは17世紀中葉、バロックの最盛期とのこと。

「それは、近代の生まれる混沌の時代であったからだ。」と説明していらっしゃいます。

私もライプニッツを読むようになって、神と科学が共存していた17世紀の方が人生面白かったんじゃないか、なんて想像していたところだったからです。

こちらも森さんと同じ次元で比較することは恐れ多いのですが、うれしくなってしまいました。

そして興味深かったのは、17世紀のガリレイ、ケプラー、デカルト、パスカルといった数学者たちの生態を語るくだり。

彼らについては宗教や政治に巻き込まれてはいても、「まだぼくの想像力の範囲にある」とおっしゃいます。

「それが、ニュートンやライプニッツとなると、その人物像がどうも不分明だ。おそらくは、十六世紀の宗教的熱情が最終的に抑圧され、錬金術秘密結社といった影の部分を作っていたのかもしれない。その影の部分に、どうも想像力が及ばない」と。

森さんは数学の教授です。私は本に出てくる数式をほとんど理解できませんでした。

現実的な世界を生き、とても明晰で合理的な思考をお持ちです。

私にとってはその影の部分に興味がある分、いくらでも「ええかげん」な仮説を立てて想像の世界に遊ぶことができそうです。