西洋の心理学や坐禅を長年やられた方の唯識仏教のやさしい解説です

岡野守也著「唯識で自分を変える」(すずき出版)という本を読んでいました。

プラユキ・ナラテボーさんの心理療法の実例を読んで感銘を受けたので、仏教と心理療法を組み合わせて書かれた本を何冊か読んでいます。

岡野さんは唯識仏教の専門家で、トランスパーソナル心理学を日本に紹介された方らしい。

論理療法やアドラー心理学と唯識仏教の統合などをテーマに本を書かれています。

そんな岡野さんの「唯識で自分を変える」の紹介文を見ると、「ごくふつうの市民が、大乗仏教の深層心理学ともいうべき「唯識心理学」を日常生活で実践し生かすためのやさしいワークブック」とのこと。

とても興味がわいたので注文してみました。

読んでみると、なるほど仏教を知らない若い人でも、無理なく唯識仏教のエッセンスを日常生活で生かせそうな内容です。

岡野さんのプロフィールを拝見すると、最初は牧師さんもやられていたようですが、主に心理学の研究者として執筆や講演などを中心に活動してこられたようです。

今まで読んできた唯識の本といえば、お坊さんや仏教研究者の方が書いたものが多かったのですが、岡野さんは論理療法やアドラー心理学など幅広い心理学を学んでこられた方だけあって、この「唯識で自分を変える」に強い仏教色は感じません。

また、岡野さんのサイト「伝えたい!いのちの意味―岡野守也の公開授業+α」の2006年01月08日の記事、「ヴィパッサナー瞑想に関するQ&A」に次のような発言があります。

「はい。とくに最近、サングラハの中でもその周辺の方でも、ヴィパッサナーに行かれる方が多くて、みんないい体験をしてきて、「坐禅ではなかなかうまくいかないので、ヴィパッサナーのほうがいいんじゃないですか」という方がよくいらっしゃいます。」

「しかし、残念ながら唯識は理論しか伝わっていません。そこで、臨済宗系の坐禅をしてみると、まさにこの理論とこの禅定の方法はぴったり対応している、と私は感じてきました。」

「私は、とにかく三十何年、四十年近く坐禅でやってきているから、他のものを取り入れてこれと同じだけの質にするのは、ちょっともう間に合わないなという気がするので、「私のところに来る人は、実践の方法としては坐禅でやってください」ということです。」

ずいぶん長く、臨済宗の坐禅をやられているんですね。

お坊さんが書かれたわけでもないのに、「唯識で自分を変える」に詳しい坐禅の説明があるのは、このような理由からでした。

一方で、これからはヴィパッサナー瞑想をやられた方が、唯識仏教の解説をされる日が来るかもしれません。

そのような本も読んでみたいと思いました。