若桑みどりさんの「マニエリスム芸術論」(ちくま学芸文庫)を読み終わりました。
成毛眞さんの著書「本は10冊同時に読め!」ではないのですが、私は興味のある本を何冊も同時につまみ読みしているので、一冊を読み終わるのが遅いです。
しかも若桑さんのこの本は分厚くて内容が濃い。読み始めて何年かかったかなという感じです。
そしてこの本で、すっかり若桑さんのファンになってしまいました。
この本は、全編を通してレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ラファエロをはじめとする、膨大な数の芸術家とその作品の解説が続きます。
イコノグラフィー(図像学)というのを知りましたし、新プラトン主義、ヘルメス文書、錬金術など、私の興味のある内容も盛りだくさん。
この本の何に惹かれたんだろうと考えていたのですが、最後にそれが書いてありました。
「たしかにイエーツが言うように、「ルネサンスの魔術は、十七世紀の科学の直接の父である」。しかし、それは、決して「科学」ではなかった。」
「ひっきょう、この時代の人は、プラトンの洞窟の人間のように、魔術的世界の洞穴の中で、夢見ることを求めたのであろう。」
そうなんですよね。
教会の支配する中世の枠組みから飛び出すために、芸術家たちの用いた武器が自分たちが科学と信じたもの。
私は、スピリチュアルと科学の境界を行き来する人間のこの得体の知れないイマジネーションに、とても魅力を感じているのです。