昨日は民俗学者の吉野裕子さんの本を、とても面白く読んでいることを書きました。
陰陽五行や易、九星の知識をもとに、いわれがはっきりしないお正月の風習などを、あざやかに読み解かれて行きます。
しかし、このような知識は今では学校で習うこともありませんし、よほど興味がある人じゃなければ自ら進んで学ぶことはないように思います。
その辺りのことは吉野さんも相当意識されていたようで、その原因と現状を、「吉野裕子全集」(人文書院)第6巻、「陰陽五行と童児祭祀」の序で次のように述べられています。
「つまり原因は、私どもの祖先達がその生活の基準として千年以上に亙り遵守して来た中国哲学が、明治を境に迷信として却けられ、日本の知性によって受け入れられなかったことにあるからである。 (中略) しかし、中国古代哲学である「易」及びそれから発展した「陰陽五行思想」に限っていえば、これほどかつての日本人にとって重要であり、祭政・軍事・医学・農業・占術等、あらゆる学術文化の規準となっていた原理が、ものの見事に捨て去られた例は、他に求められないのではないだろうか。十数年来、ひとりこの原理の導入によって日本の祭り・民俗の見直しに努めて来たつもりであるが、本書もまたその復権への一助となることを心から願うものである。」
そうなんですね。
確かに吉野さん以外に、易や陰陽五行をディープに駆使した民俗学の本は、今まで見つけきれなかったように感じます。
吉野さんも自らの仮説をもとに検証作業を進められていると思うのですが、一読者の希望としては、民俗学に携わっていらっしゃる方々による、易や陰陽五行などの原理をもとにした意見交換を楽しんでみたいと思っています。