ユングの「心理療法論」(みすず書房)を少しずつ読み進めています。
以前、河合隼雄さんの「カウンセリングの実際」(岩波現代文庫)があまりにも面白くて、このシリーズである「〈心理療法〉コレクション」を揃えてしまったことを書きました。
こちらも今読み進めているのですが、私はユングの著作を読んだことがないので、ちゃんと本人が心理療法について書いた本を読んでみたいと思ったんですね。
河合さんの本を読んでいたので、ユングの心理療法について、ごく基本的なところは分かっていました。
フロイトやアドラーの理論の有効性を認めているところや、普遍的な治療法はなく患者個別に対応するスタンスなどが、ユングの口から語られます。
ユングが何故夢を重視するかも泥臭く説明しています。
「私のところに来る患者は、初めて治療を受ける人はほとんどいないというほどに片寄っている。ほとんどの事例がすでに何らかの心理療法的治療を受けており、しかも部分的成功ないし失敗を経験している。」
・・・と述べた上で・・・
「それゆえ私はこうした場合に何よりもまず夢に注目する。私がそうするのは、何も私が是が非でも夢を用いてなされなければならないという理念に固執しているからとか、森羅万象が夢にしたがって動いているに違いないという神秘的な夢理論をもっているからではなく、ごく単純に途方に暮れてのことにすぎない。私にはこれ以上のどこからしかるべきものを手に入れられるのか分からず、それだからそれを夢のなかに見出そうとしているのである、というのも夢は少なくとも何もないよりは多くのことをそれなりに示唆する想像をもたらしてくれるからである。」
そしてユングは、夢の解釈に必要な知識として次のように述べます。
「このため未開人の心理学・神話学・考古学・比較宗教史についてできるかぎりたくさん知ることは、私にとってきわめて重要な事柄である、なぜならこれらの領域は患者の思いつきを膨らませることのできる計り知れない類似物を提供してくれるからである。」
書店で「心理学と錬金術」(人文書院)のような本を見てみると、ユングは膨大な象徴の研究をしているようですが、こういう動機があったのですね。
私も若桑みどりさんのイコノロジーに関する本はとても好きなので、ユングの心理療法に惹かれる理由が分かりました。私は象徴マニアだったんですね。
今日の大きな収穫でした。