以前より少しずつ読み進めていたユングの「心理療法の実践」(みすず書房)を読み終えて、本の最後に掲載されている翻訳者の横山博氏と大塚紳一郎氏が書かれた「解題」を読んでいました。
ユングの心理療法の重要な特徴と考えられる三点、(1)個別性の重視、(2)目的論的方法、(3)弁証法的過程、を挙げられています。
面白いなと思ったのは(2)目的論的方法。フロイトとの違いが明確に述べられています。
うまくできるかどうか分かりませんが、以下抜粋してみます。
「作用因とは「何が原因でそれが生じたのか」という問いに対する答えを探求していくやり方だ。たとえば夢の中に「ヘビ」というモティーフが登場した際に、それは偽装された性的内容であり、その人の中に根源的な性的欲求が存在し、かつそれが実現不可能であるからそのようにして表されたのだと考えるのが作用因の探求、すなわち還元的方法の一例である。ユングはこれをフロイトの方法論の特徴だとした。 (中略) 目的因、すなわち「何のためにそれが生じたのか」という問いに対する答えを追求するやり方である。たとえば夢の中に同じく「ヘビ」が登場したとして、それが持つ印象、思い出、意味などといったものが夢を見た当の本人にどのような影響を及ぼしていくのかを探求する方法だ。ユングはこの目的因の探求、すなわち目的論的方法を自身の方法論の中心に据えた。 (中略) フロイトの還元論的方法、すなわち自由連想は、連想の果てに重要な何か、たいていは性に関わる何かに突き当たった時点で、夢の根源が明らかになったとされる。 (中略) これに対して、目的論的方法は夢の根源を明らかにするのではなく、夢のモティーフを象徴として扱うということを基本とする。 (中略) 仮にそのヘビがペニスと実際に深い関連性を持っていたとしても、そのように理解することでそこに表されている可能性のあるその他の未知なるものを蔑ろにし、その情動的価値を損ねてしまうからだ。」
このような多様性を重視するところが、ユングも研究した易経と相性がいいのだと思います。
ユングを学ぶことで、易経の解釈にもいい刺激をもらっているなと感じています。