仏教も深層心理学と共通する部分があるようです

岡野守也さんの「唯識のすすめ」(NHKライブラリー )は、仏教の深層心理学とも言うべき唯識(ゆいしき)を解説した本です。

唯識は大乗仏教の学派のひとつ、瑜伽行(ゆがぎょう)唯識学派によって体系化されました。

唯識では感覚を「識」と言います。「視」、「聴」、「嗅」、「味」、「触」の五感に「意識」を合わせて六識。

その先に、潜在意識としての「末那識」(まなしき)と「阿頼耶識」(あらやしき)があります。

その阿頼耶識が、六識と末那識を生み出しているのであって、識自体に実体は無い。すなわち外界(自分から見て世界)に「もの」は存在せず、唯(ただ)識(しき)だけが存在する。

何のことかよく分かりませんよね、初めて見る方には。

瑜伽とはヨーガのことで、阿頼耶識はヨーガをしていた人たちによって発見されたそうですので、この説明も、ヨーガの実践によって得られることなのでしょう。

岡野さんは、先にあげた本の「深層心理学と唯識」という章で、フロイト、ユング、アドラーの各心理学と唯識との関連性を考察しています。

特に、ユングの集合的無意識は、阿頼耶識と同じ領域を違った角度から見たものではないか、と仰られています。

詳しくは本を読んでいただきたいのですが、本の最後に、比較的新しい分野であるトランスパーソナル心理学と仏教との習合を紹介されています。

唯識思想はとても難しい教理ですが、私たちに馴染みのある西洋の深層心理学と比較してみると、興味を持って接することができるように思いました。