能は異界を旅する物語のようです

先日、室町文化の中では能が面白いという記事を書きました。

以前、室町文化について調べているとき、能について書いてある本を読んでみようと思い立って、安田登著「異界を旅する能 ワキという存在」(ちくま文庫)という本を見つけました。

能には夢幻能と現在能という種類があるようで、この本は主に夢幻能について書かれています。

登場人物はシテ役とワキ役がいて、旅人であるワキが、幽霊や精霊であるシテと出会うことから始まる異界の物語、というような説明がされています。

もう即買いです。とても面白くて、すぐに読み終わってしまいました。

アーサー王もそうですが、私は異界に迷い込む話が好きなんですね。

幽霊や精霊であるシテは普通の人には見えないのですが、それを見る特殊能力を持つのがワキという人のようです。

ワキの役割は、舞台の最初で、旅の途中のワキがシテと出会うことで、観客にシテの存在を分からせることにあるそうです。

その役割が終わると、ワキは舞台の隅で座っているだけの存在になるとのこと。

私はNHKで能が放送されているとき、数分程度それを見ることがあったのですが、お面を付けた登場人物が一人で舞っている場面ばかりだったのは、そういう理由だったのですね。

異界についての知識は、柳田國男、折口信夫、小松和彦のような民俗学の方の本から学びました。

しかし考えてみると、これら民俗学の方が能の異界について書いている本を、あまり見かけた記憶がありません。

この本がとても面白かったので、安田登さん以外の能の世界の方が、異界について書いている本がないかも調べてみたのですが、どうも見当たらないようです。

多分、見つけられないだけだと思うのですが、民俗学的に格好の研究対象のように思いますので、ちょっと不思議な気がします。