異界という言葉のイメージにワクワクしているだけのようです

小松和彦さんの本などの影響で、元々異界についての話が好きだったのですが、それはあくまで本の中の世界を楽しんでいたという感じです。

安田登さんの「異界を旅する能 ワキという存在」を読んでみると、能を鑑賞することで、実際に異界を体験できるようなのです。ワクワクしてしまいました。

しかし改めて異界というものを考えてみると、単純なイメージとしては、お化けがいるところとか、この世に対するあの世のことなのでしょうし、民俗学的には外国人であったり、芸能の民や山で生活する人のように、外の世界から訪れる人のことになるのでしょうか。

実生活で使われる「異界」という言葉は、民俗学や文化人類学の用語というよりも、小説などで流行語として多用されているため、語義が定まっていないということのようです。

能に限っていえば、この世に生きるワキが、あの世の住人シテを呼び出す話ですから、少なくとも、室町時代の人々が持っていたあの世のイメージを、現在の私たちが感じることができる場ではあると思います。

能の舞台というのは、観客のいるこの世と異界との間にある「境界」にあたるともいえます。

そんなことに考えを巡らせているうちに、赤坂憲雄著「境界の発生」(講談社学術文庫)という本を見つけてしまいました。

「境界の発生」ということは、私たちが境界と認識しているものの起源までたどり、それと同時に、異界の起源も見せてくれるのでしょうか。

いつものように、面白く読んだだけで終わってしまいそうですが、期待して読んでいるところです。