そんな中で思い出すのは、プラモデルを作りたいと思って、何度か買ってもらったことです。
これは珍しく、自分からやりたいと思ったことでした。
確か、F1カーを含むレーシングカーだったように記憶しています。
雑誌などですばらしい完成度の作品を見ていたので、自分も同じように作ることができると思い込んだのですね。
それにタイトルも内容も覚えていませんが、子供の頃テレビで見た洋画で、今でも覚えているシーンがあります。
お爺さんが海で流木を拾ってくる。
葉巻をくゆらせながら、蚤などの道具を使って、流木を立派なミニチュアの帆船に仕上げる。
何てすばらしい。自分も同じことをやってみたい。
それと同じような衝動が、プラモデルを欲しがる気持ちにもあったのだと思います。
山のような数のパーツを前にして、これから組み立てる興奮を抑え切れませんでした。
しかし、そんな情熱を持って始めたプラモデル作りも、ついぞ一度も完成させることはできませんでした。
同じような形のパーツを、設計図を見ながら一つ一つ接着剤でくっ付けて行く。ただただ地味な作業の連続です。
たまに接着剤がドバッと出すぎる。どんどん見栄えが悪くなる。
子供がそんなに手先が器用なはずはありませんし、持続力もない。
そのうち飽きてきて放置してしまう。
嫌々やらされる習い事ではなくて、自分からやりたいと思って始めたことなのに、それさえ続けることができないのか。
ああ、自分は何て駄目な人間なんだ。
当時はそこまで考えていたわけではありませんが、そんな経験を重ねるうちに、子供の頃に持っていた万能感は失われて行き、自尊心も失って行ったんじゃないかと思います。