ある時期から人を怖がらせることに別の目的を感じるようになりました

子供の頃は経験が乏しいので、暗いところにはお化けが潜んでいるようで怖いですよね。

心理学者のユングは、幼児期に恐ろしい「人食い」の夢を見て、これが生涯のトラウマとなり、心理学の考えを深めることにも繋がったとう話があります。

大人でも知識がないことに対して、その道の権威に何かいわれると、つい信じてしまいがちです。

お坊さんに地獄の話をされたり、霊能者といわれている人に幽霊の話をされたりすると、妙に説得力があるので信じてしまう気持ちも分かります。

太宰治が幼い頃、お寺で地獄絵図を見せられてあまりの恐ろしさに泣いたように、私も子供ながらに、なぜ仏教ってこんなに恐ろしい地獄を見せるんだろう、と疑問に思ったものでした。

もう20年近く前ですが、田上太秀氏の「仏陀のいいたかったこと」(講談社学術文庫)という本を読みました。

その本の「霊魂を否定し、無我を唱える」という章に、仏陀は人の老死の現実的苦しみの由来について問うたのであり、霊魂について説くことはなかった、というようなことが書いてありました。

ずいぶん合理的な考え方をした人のようで、「いまの生き方、考え方がいかにあるべきかだけが問われている。」とあります。

当時はそのことを知って、とても驚いた記憶があります。

地獄や幽霊の話をして人を怖がらせるようなことは、信者を獲得したり商売に結びつけたりするような何か別の目的があるんだな、と思いを強くしたものです。