世阿弥が唯識と易経の両方に影響を受けていたことに驚きました

岡野守也著「能と唯識」(青土社)という本を注文しています。絶版になっているので古書です。

この本は能と唯識との関連性に焦点を当てた内容のようで、以前安田登著「異界を旅する能」(ちくま文庫)という本がとても面白かったので、こちらも気になっていたのです。

能を大成した観阿弥・世阿弥といえば唯識学研究の総本山、法相宗興福寺の保護を受けていたようなので、大いに影響を受けているのでしょう。楽しみです。

今日ふと思い立って、インターネットで世阿弥について調べていたら、「花鏡」という能芸論書の中に易経を使って説明する箇所があるのだとか。

なかなか唯識と易経の両方に影響を受けた人物は見当たらないので、気になってもう少し調べてみました。

一つ見つけた情報は、世阿弥は岐陽方秀(きようほうしゅう、ぎようほうしゅう)という禅僧と親交があったということ。

この方は京都五山の一つ、東福寺の僧で、五山では易経を研究していたらしい。

もう一つ見つけた情報は、興福寺の「大乗院寺社雑事記(ぞうじき)」の記録に、寺に属していた声聞師の配下に猿楽師がいたとのこと。そこに観阿弥、世阿弥もいたのでしょうか。

そして声聞師自身の仕事に陰陽師も含まれていたとのこと。

陰陽師が行う占術は確か易占いですよね。

やはり世阿弥は、易経に接する環境にあったということなのかもしれません。

ちなみにこの興福寺の記録というのは、諏訪春雄著「安倍晴明伝説」(ちくま新書)という本に記載されています。

実はこの本は三十代の頃に買っていてすっかり忘れていたのを、インターネットで調べていて思い出したのでした。

今日は世阿弥が唯識と易経に影響を受けていたことと、人が興味を持っていることは何年経っても変わらないことの両方に驚いたのでした。