歴史と心の関係

室町文化の中では能が面白いと思いました

能が成立したのは室町時代の初期、北山文化の時期にあたります。

能は猿楽から発展した芸能といわれています。

同じ猿楽をルーツに、庶民向けにコミカルな劇として発展したのが狂言です。

面白いなと思うのは、能の創始者である観阿弥、世阿弥が信仰していた宗派で、時宗の人のようですね。

時宗といえば、一遍上人が開いた浄土宗の一宗派で、この方は踊念仏を広めた人です。

足利義満が観阿弥を後援したことから能が発展したのですが、室町幕府が保護していた宗教は禅宗の臨済宗ですよね。

私には知識がないので説明できないのですが、鈴木大拙著「続 禅と日本文化」(岩波新書)には、「禅と能」という章で、その関係性が説明されているようです。

観阿弥は時宗の人なので、踊念仏の影響で狂言のような舞台をやっていたように考えてしまうのですが、足利義満の目に留まるほど禅的な要素があったのでしょうか。

一遍上人は鎌倉時代の人ですから、当時は元寇や飢饉などの影響で、庶民の生活は苦しく不安も大きかったでしょうから、踊念仏はそれを忘れるくらい激しい踊りだったのではないかと想像します。

坐禅の静的な修行をイメージしてしまう禅宗とは、全く相容れないように感じてしまいます。

日本の文化芸術に大きな変化が起きたのはいつだったのでしょう

社会の大きな変化は、人々の生活だけでなく、人々の精神にも影響を及ぼします。

精神に影響を及ぼすということは、精神活動である文化芸術にも大きな影響を及ぼすわけで、逆にいえば、文化芸術から、その時代の人々の心理状態や心情のようなものも、感じ取れるのではないでしょうか。

先日よりお話しているマニエリスムでそのことに興味を持ったので、日本ではどうだったのかということが気になりました。

私は日本史に詳しくないので調べて書いていますが、日本独特の文化が形作られた時代といえば、幽玄の能(北山文化)や、わび、さびの茶の湯(東山文化)などが成立した室町文化といわれているようです。

南北朝も統一されて室町幕府が実権を握った時代ですが、政権は磐石ではなかったようで、応仁の乱が起こっています。

不安定な政情も影響したのでしょうが、将軍の足利義政が文化に力を入れたことが大きかったようです。

戦国時代になると、豪華絢爛な安土桃山文化が花開きます。

織田信長、豊臣秀吉の時代ですね。種子島に鉄砲が伝来し、ザビエルがキリスト教を伝えました。

新たな武器や宗教の普及は、世の中の仕組みを変えるわけですから、文化芸術にも大きな影響を与えたはずです。

歴史と文化芸術の関係をとても興味深く感じるようになりました

「○○世紀は○○文化の時代」と杓子定規には決められないでしょうが、やはりその時代の特色ある文化は存在するはずで、昨日お話ししたマニエリスムなどは、20世紀に入るまであまり知られていなかった、というのも興味深い話です。

その理由として、若桑みどりさんの「マニエリスム芸術論」には、「・・・十七世紀の新古典主義的美学と美術批評が、全力をあげて十六世紀を否定したためであり・・・」と書かれています。

文化庁のホームページにあるように、「文化芸術は人間の自由な発想による精神活動及びその現れである」ので、もしマニエリスムという様式が知られていなかったとしても、十六世紀の絵画や彫刻を見て、そこに十五世紀のルネサンスとも十七世紀のバロックとも違うものを感じたならば、どの時代とも異なる人々の精神の特徴を想像することもできるわけです。

その時代の人々の精神活動の現れが文化芸術なのですから。

私にそれができるかといえば無理のように思いますが、この本を読んでそんなことを思い付いたのは収穫でした。

私は人物の名前や年号を覚えるのが苦手て、日本史や世界史の成績はよくありませんでした。

文化芸術はその時代の人々の精神的な影響を強く受けるのですね

私は本を何冊も同時に読みます。しばらく読んで飽きたら他の本を読む、という感じです。

積読している本もあります。

何年か前に買って積読中だった若桑みどり著「マニエリスム芸術論」(ちくま学芸文庫)を読み始めました。

本の裏表紙には、「マニエリスムとは何か。それは危機の時代の文化である。・・・(中略)・・・だが、その根本を支えてきたキリスト教的世界像が崩れ、古き中世が解体する16世紀は、秩序と均衡の美学を喪失する。不安と葛藤と矛盾の中で16世紀人は「危機の芸術様式」を創造する。・・・」とあります。

16世紀といえば、ルターの宗教改革、マゼランの世界一周、コペルニクスの地動説など、それまでの価値観が大きく揺らいだ世紀です。

文化庁のホームページ「(1)文化芸術振興の基本理念」には「文化芸術は人間の自由な発想による精神活動及びその現れであることを踏まえ,文化芸術活動を行う者の自主性を十分に尊重する。」とあります。

つまり、「キリスト教的世界像が崩れ」た時代の芸術様式を読み解けば、その時代に生きていた人の精神意識が理解できるということですね。

15世紀にルネサンスが隆盛を極めたあと、教科書的にはバロックになるのでしょうが、バロックは17世紀みたいです。