深層心理

長い年月をかけて変わっていくのだろうと思います

臨床心理士などの肩書きを持つ、倉成央さんという方の「努力がすぐに結果になるたった1つのルール」(大和出版)という本に書かれているのですが、例えば親から「お前は頭が悪い」と言われ、その思い込みが真実に近い思考になったものをインナーメッセージと呼ぶそうです。

大人になって、これではいけないと決意し、インナーメッセージに反抗するように努力して生きているのですが、何かの拍子にインナーメッセージ通りの生き方に戻ってしまう。

心理学の交流分析では、前者を生き方を意識上の「対抗脚本」、後者を無意識の「人生脚本」という言葉で表すそうです。

それほど無意識の力は強いわけで、私が脳科学の本を読んだくらいで、すぐに変われる訳がありません。

ちなみにこの本には、インナーメッセージを変えるための演習も記載されています。

では、変われないかというと、それについては少し楽観的に考えています。

無意識とは違いますが、森博嗣さんの「人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか」(新潮新書)という、思い込みや常識などに囚われない、抽象的思考の必要性を説いている本があります。

脳科学でもすぐには人格は変わってくれないようです

片寄った考え方を続けて、またいつか心に負担をかけてしまうのは避けたいので、心理学や仏教、はたまた荘子まで、さまざまなものの見方のヒントを与えてくれる本を読んできました。

科学的なアプローチも必要だろうと思いましたので、V・S・ラマチャンドラン他著の「脳のなかの幽霊」(角川文庫)のような脳科学の本も読んでみました。

周到な準備に基づく実験の数々は、「へぇ~」と唸ってしまう結果ばかりでした。

非科学的な判断で不当に扱われる人をなくす、という意味では、科学的視点はとても大事だと思います。

一方で、実証されていないものについては言及しない、という立場になるのでしょうね。

私が科学者だったら、パニック障害や鬱の人がどんな方法でもいいので助けて欲しい、とすがってきたとき、どうするんだろう・・・。

そんなことを考えてしまうほど、今まで知らなかった脳科学の実験の世界に、感心するやら混乱するやら、してしまったんですね。

さらに言えば、エレーヌ・フォックス著「脳科学は人格を変えられるか?」(文藝春秋)という本を読んだ直後は、「やった!これで性格を変えられる」と本気で喜びました。

荘子にも自分の解釈を変えることに繋がる話が豊富に出てきます

NHK「100分de名著」ブックスのシリーズに、玄侑宗久さんの「荘子」があります。

なぜ禅宗のお坊さんが荘子なんだろうと思いましたが、読み進めるうちに、仏教にも通ずるものがあることを知りました。

端的な例として、荘子には、坐禅にきわめて近い坐忘(ざぼう)という「行」のエピソードがあるようです。

顔回(がんかい)という孔子の弟子が、孔子に坐忘を行ったときの心境を伝えるくだりがそれで、玄侑さんは、荘子もこの「行」に取り組んだ時期があるのではないかと仰られています。

世界史の教科書に出てきた鳩摩羅什は、経典を漢訳して中国に仏教を普及させた人ですが、それまでは、主に老子や荘子の言葉を流用して漢訳されていたそうです。

それほど、老子や荘子と仏教は相性がよかったということらしい。

達磨が開祖といわれている中国禅宗は、嵩山(すうざん)が発祥の地といわれています。

この地も、道家(道教)の本拠地だったそうで、それほど老子、荘子には禅を受け入れる下地があった、ということのようです。

私も個人的に、荘子の話を荘子とは知らずに、折に触れて思い出してきたように思います。

幸福になる方法の一つは解釈を変えること、というのはその通りだと思います

「ハーバードの人生を変える授業」(だいわ文庫)をはじめ、ネットでもたまに見かけますが、ものごとに対する自分の解釈を変えることが、幸福になる方法の一つ、という趣旨の記事があります。

私が体を壊して以降、本などを通して学ぼうとしてきたのは、そのことだったように思います。

体を壊してしまったのは、狭いものの見方しかできなかったことが原因の一つだと思うのです。

読書の効能と言われものの一つに、幅広いものの見方が身に付くことがありますが、確かに本を読んでいると、自分の片寄ったものの見方を反省する機会が多いです。

心理学関連で言えば、河合隼雄さんの本などは、ユングの心理学を通して、私たちの知っている昔話やよくある夢などの、その意味するところを教えてくれます。

例えば、男性の心の中には女性像の元型(アニマ)が、女性の心の中には男性像の元型(アニムス)が、それぞれ存在し、その働きによって起こるいろいろな物語や現象が紹介されています。

会話などでよく使うコンプレックスや、マーケティングの本に出てくるペルソナ(仮面)は、フロイトやユングの深層心理学の言葉だったんですね。

深層心理学は、自分の解釈を変えることに繋がる事例の宝庫のように感じます。